2011/05/30

入院リハをうけた高齢廃用患者の長期予後 (meta-analysis)

Inpatient rehabilitation specifically designed for geriatric patients: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ. 2010.
当院リハ科では廃用患者も多く入院されているのですが、御高齢でいろいろな合併症がある方だと脆弱化(frailty)などの問題もあり、自宅退院後どこまで機能維持できているかについて疑問がありました。
これはBMJに掲載されたメタアナリシスで、高齢入院患者におけるリハの機能予後・生命予後に対する長期効果を明らかにした論文です。

全身疾患による入院後、廃用にてリハをうけたGeneral geriatric rehabilitation群(廃用群)の論文8つと、骨折により入院後リハをうけたOrthopaedic geriatric rehabilitation群(骨折群)の論文7つが選ばれています。年齢は大体65歳以上といったところでしょうか。

機能予後に関する結果です。入院リハ後、自宅退院されてから3-12週経過観察したところ、骨折群は機能維持できていたのに対し、廃用群は機能維持できていませんでした。

生命予後に対しては3-12週フォローしたところ、骨折群では入院リハを受けたほうが有意に生命予後が良かったのに対し、廃用群では入院リハが生命予後に寄与していないことがわかりました。

詳細に関しては原著に帰る必要がありますが、合併症や原疾患のある高齢廃用患者では退院後また具合悪くなったときに機能が維持できにくいし、リハが生命予後に寄与しにくいということではないかと思います。

障害程度や退院後のサポート体勢にもよるかと思いますので、日本でならもう少し良い結果が出るかもしれませんし、もちろん機能維持できている廃用リハ症例がいることも確かです。いずれにせよ、高齢廃用患者に対する入院リハに際しては自宅退院後機能維持できるかどうかの見極めが必要かと考えられました。そして、そのあたりの見極めこそリハ医の出番かと!

第11回日本抗加齢医学会総会体験記

2011/5/27-29、京都で第11回日本抗加齢医学会総会が開催されました。

最近、学会員が7000人を超え、専門医と指導士も増えているとのことでした。ランチョンセミナーの券も午前中の早い時間になくなっていたようでした。

ランチョンセミナーのアンチエイジング弁当。カロリーリストリクションを考慮して、1日カロリー=体重×0.4単位(1単位=80kcal)で計算されています。低GI弁当でもあり、食後血糖があがらず眠くならなかったです。

学会後は焼き鳥屋さんの屋台等が出ており、皆さん楽しまれていました。

企業ブースはサプリメントと美容系の機器でいっぱい。

懇親会にはクラシック演奏者や芸妓さんが来て、華やかな感じに。

お茶会等も行われていました。

幅広い分野のシンポジウムが行われており、今回は栄養と運動のセッションをメインに知識をUPTODATEしました。抗加齢医学栄養運動療法ガイドラインを作ろうというワークショップが行われ本気の討論が行われていました。あと吉川理事長のアグロメディカル構想には驚きました。

1st International Conference on Anti-Aging Medicineも併催され、盛んに英語でディスカッションがなされていました。市民公開講座では食とアンチエイジングがテーマに取り上げられていました。

お土産に京菓子を買って帰りました。第12回日本抗加齢医学会総会は2012/6/22-24パシフィコ横浜で開催予定とのことでした。

2011/05/25

DASH食のメタボリックシンドローム予防効果

Beneficial effects of a Dietary Approaches to Stop Hypertension eating plan on features of the metabolic syndrome.Diabetes Care. 2005 Dec;28(12):2823-31.
これはDASH食にメタボリックシンドローム予防効果があるかを検討したRCT論文です。DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食はもともと高血圧予防のためにアメリカで開発された食事で、野菜・果物、低脂肪乳製品、全粒穀類、魚、鶏肉、ナッツの摂取を増やし、脂肪、砂糖、赤身の肉を減らすのが特徴です。この研究では、コントロール群とDASH群、減量食群(DASH食と同カロリー)の3群にわけ、6ヶ月フォローし体重、腹囲、HDL、TG、血圧、血糖の改善をみています。
結論ですが、減量食群ではHDL、拡張期血圧、血糖値に有意な改善がみられなかったのに対し、DASH群では全てのパラメーターが有意に改善したとの結果です。DASH食には塩分制限なしに血圧をさげる効果がありますが、メタボリックシンドロームを予防する効果もありそうです。

2011/05/23

地中海料理のメタボリックシンドロームに対する効果 メタアナリシス


The effect of Mediterranean diet on metabolic syndrome and its components: a meta-analysis of 50 studies and 534,906 individuals. J Am Coll Cardiol. 2011 Mar 15;57(11):1299-313.
健康に良いと言われる食事はいろいろありますが、これは地中海料理がメタボに良いかどうかを検討したメタアナリシスです。
50もの論文から534,906人ものデータを組み入れて検討しています。

フォレストプロットの結果を見ると、Clinical trialにしぼれば有意な体重減少効果あり。


その他、combined effectをみてみるとウェストをスリムにし、HDLをあげ、TGをさげ、血圧をさげ、血糖値を下げる効果があるとの結果です。地中海料理はメタボに良さそうです。もちろん食べ過ぎては元も子もないと思いますが。

2011/05/22

骨粗鬆症に対するイソフラボンの効果 メタアナリシス

Soy isoflavone intake increases bone mineral density in the spine of menopausal women: meta-analysis of randomized controlled trials. Clin Nutr. 2008
大豆イソフラボンには女性ホルモンと類似した作用があるそうです。この研究はイソフラボンが閉経後骨粗鬆症予防に有効かどうかを検討したメタアナリシスです。更年期女性の椎体骨密度をみた研究を10集めてメタ解析しています。
フォレストプロットをみてみるとイソフラボン摂取群はコントロール群に比べ有意に骨密度が維持できたとの結論です。

ファンネルプロットを見てみると出版バイアスなしとの結果。
閉経後骨粗鬆症予防を目的とした場合、イソフラボン90mg/日以上、6ヶ月以上の摂取が必要であろうということでした。イソフラボンには骨粗鬆症予防効果がありそうです。

2011/05/21

献血に癌予防効果?




Decreased Cancer Risk After Iron Reduction in Patients With Peripheral Arterial Disease: Results From a Randomized Trial. J Natl Cancer Inst 2008. 瀉血ががん予防に有効という、かなり衝撃的なRCT論文です。末梢血管疾患患者(1200人)を瀉血群と非瀉血群にわけ6年フォローしました。COX比例ハザードモデル(Intention-to treat)で解析しています。


結果ですが瀉血群で有意に癌関連死亡率が低かった、との結果です。鉄が活性酸素を誘起しDNAを障害するためではないかとのこと。血の気の多い人は献血したほうが良い?

2011/05/18

ビタミンDは多すぎてもいけない

Plasma vitamin D and mortality in older men: a community-based prospective cohort study.Am J Clin Nutr. 2010
ビタミンDには様々なアンチエイジング効果が報告されており、まさにアンチエイジングビタミン、といったところですがビタミンDの血中濃度が高すぎてもいけないとの報告もなされています。

この論文では1194人の男性を12年フォロー、血中ビタミンD濃度と死亡率の関連性を検討しています。フォロー中に半数が死亡。結果ですが、血中濃度が高すぎても(>98 nmol/L)低すぎても(<46 nmol/L)死亡率があがるというU-Shape現象がみられたとのこと。ちなみに癌だけにしぼった場合、高すぎると2.64倍、低すぎると2.2倍死亡率が上昇したとの結果です。何事もバランスが大切です。

2011/05/17

アンチエイジングに有効な食生活とは


Dietary Patterns and Survival of Older Adults.Journal of the American Dietetic Association. 2011,84-91
どんな食事をすれば長生きできるのでしょうか。これは70歳以上の高齢者3000人を食事パターンで分類、8年フォローした研究です。

食生活パターンは
Healthy foods (n=374)
High-fat dairy products (n=332)
Meat, fried foods, and alcohol (n=693)
Breakfast cereal (n=386)
Refined grains (n=458)
Sweets and desserts (n=339)
の6つに分類されています。

Cox proportional hazards regressionで解析された死亡率の結果ですがHealthy foods群にくらべ、High-fat dairy products群では1.4倍、High-fat dairy products群では1.21倍、Sweets and desserts群では1.37倍でした。
ちなみにHealthy Foods clusterの特徴はhigher intake of low-fat dairy products, fruit, whole grains, poultry, fish, and vegetablesとのことです。完全にこのような食生活をするのは困難かとは思いますが、できるだけこれに近いような食生活ができると良いですね。




2011/05/16

てんかん患者と運転免許

てんかん患者における自動車運転の可否はどのように判断すれば良いでしょうか?道路交通法改正にともなう運転適性の判定について.てんかん研究 2002;20:135-138によれば


・発作が過去 5年以内に起こったことがなく、医師が「今後、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合

・発作が過去2年以内に起こったことがなく、医師が「今後、X年程度であれば、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合

・医師が、1年間の経過観察の後「発作が意識障害及び運動障害を伴わない単純部分発作に限られ、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合

・医師が、2年間の経過観察の後「発作が睡眠中に限って起こり、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合

これらの場合は運転適性があることになり、免許取得が可能としています。


運転の可否に関しては医師の判断・適性検査が必要です。基本的には2年間発作がない場合は、てんかん患者の事故発生率は一般人と変わらないとのことですが、大型免許及び第二種免許に関しては、日本てんかん学会としては現時点で、てんかんに係る発作が投薬なしで過去5年間なく、今後も再発のおそれがない場合を除き、通常適性なしとの見解だそうです。

2011/05/15

歯磨きのアンチエイジング効果


Toothbrushing, inflammation, and risk of cardiovascular disease: results from Scottish Health Survey.BMJ.2010

歯磨きすると長生きできるでしょうか?本研究はBMJに掲載された歯磨き頻度と慢性炎症や心疾患との関係を検討した研究です。
対象は11869人(平均年齢50歳)で8年近くフォローアップしたところ、555人が心疾患にかかりました。



COX比例ハザードモデルの結果です。一週間に時々しか歯を磨かない人は、一日二回歯を磨く人に比べ慢性炎症のリスクが高く、1.7倍心疾患にかかりやすかったとの報告です。結構高いですね。
歯磨きを怠ることにより歯肉等に慢性炎症がおこり、それが心疾患のリスクを増加させているのでは、とのこと。私も昔歯磨きを怠っていた時期があり、いろいろ歯のトラブルが続いていたのですが、日大出身の歯科の先生に歯磨きを指導してもらってから万事調子が良いです。歯磨きには健康寿命延長効果・アンチエイジング効果がありそうです。

性的興奮の頻度と死亡率との関係

Sex and death: are they related? Findings from the Caerphilly cohort study.BMJ.

メイクラブにアンチエイジング効果はあるのか? これはBMJに掲載された性的興奮の頻度と死亡率との関係をみた論文です。45~59歳の男性918人(イギリス人のCaerphilly cohort)を10年フォローしています。
結果ですが、性的興奮の多い人の死亡率は性的興奮の少ない人の半分であるとの結論です。性行為が前立腺癌のリスクを減らすとの報告もちらほらあり、それと関係しているのかもしれません。女性に関する臨床研究は見当たらなかったのですが、恋をすることでエストロゲンが出て、アンチエイジング効果が、、、ということはあるかもしれませんね。

睡眠時間と死亡率(日本人の場合)


Association of sleep duration with mortality from cardiovascular disease and other causes for Japanese men and women: the JACC study. Sleep. 2009 Mar 1;32(3):295-301.
何時間くらい眠るのが一番、長生きできるのでしょうか?これはJACC Study(Japan Collaborative Cohort Study on Evaluation of Cancer Risk)において、10万人の日本人を10年フォローした研究です。


結果では7時間くらいが一番長生きで、睡眠が短すぎても長すぎても死亡リスクが高まるということです。睡眠の質にもよるのでしょうが、惰眠を貪り過ぎるのもいけないな、と今日は早起きしてみました。

2011/05/14

低グリセミック食の有用性(メタアナリシス)

Glycemic index, glycemic load, and chronic disease risk—a meta-analysis of observational studies. Am J Clin Nutr 2008;87:627–37.
ひと昔、食後血糖値があがりにくい低グリセミック食がダイエットに良いとブームになりました。
グリセミックインデックス(GI)値は、食物が食後血糖値を上昇させる強さを表す指標ですが、GI値を配慮した食事がどんな病気に対し予防効果があるのかついてのメタアナリシスを見つけたので読んでみました。

274ものスタディから37つが選ばれています。研究の対象疾患は糖尿病(9)、心臓病(2)、脳卒中(2)、乳癌(8)、大腸癌(7)、膵癌(5)、子宮癌(3)、胆道系疾患(2)、眼疾患(5)、卵巣癌(1)、胃癌(1)です。


メタアナリシスの結果です。GI値を配慮した食事をしている人たちはそうでない人たちに比べ、糖尿病、心疾患、胆道系疾患、乳癌になりにくかったということでした。(その他の疾患では有意差なし)
低グリセミック食を食べることでいろいろな疾患を予防することができるとのこと、低グリセミック食にはアンチエイジング効果がありそうです。

2011/05/11

世界のアンチエイジング学会いろいろ

世界中のアンチエイジング学会を探してみました。


とにかく数が多いです!あまりにも多いので掲載しませんが
アジアでも比較的盛んに学会活動されているようですね。

一番大きなアンチエイジング学会であるAnti-Aging Medicine World Congress & Medispa、次回は来年3月末MONACOで開催予定ですね。時間があれば行きたいです。(今年3月にあった国際アンチエイジング学会ツアープログラムの情報載せておきます)

2011/05/10

アバンチュールは突然死のリスク因子?

若い心不全患者さんから「いわゆるMake Loveは心臓に負担がかかるからやめた方が良いか?」と相談されて(もう少し遠回しに聞かれましたが)調べてみました。

なかなか良い文献がなかったのですが古い日本の文献で良いものを見つけました。
上野正彦:性交死(腹上死)の実態.Sexual Medicine 3(1):28-33. 1976.
著者は東京都観察医をされていた方です。行政解剖5559例のデータから突然死のうち性交死は34例(0.6%)程度であったとのこと。内訳は心臓死が20例、脳出血は14例で、相手は79%が婚外性交(愛人など)が多く、場所は旅館(ホテル)が68%と多かったとの報告です。

通常、性交による運動強度は3-4METs程度で、5-6METs以上の運動負荷に耐えられれば性交中の虚血リスクは少ないはずですが、精神的興奮が高まるような場面ではどれくらい心負荷がかかるかわかりません。

心臓が悪い人は(も?)不倫しない方が良いでしょう。患者さんには奥さん以外の人とはやめておいた方が良い、と指導しました。

2011/05/09

グルタチオンの美白効果に関するRCT

Glutathione as an oral whitening agent: A randomized, double-blind, placebo-controlled study.J Dermatolog Treat. 2010.
グルタチオン(タチオン)の美白効果が本物かどうか調べていて見つけた論文です。60人のタイ医学生を対象としたRandomized, double-blind, placebo-controlled studyで、グルタチオン500mg/日・1ヶ月経口摂取群とプラセボ群で比較検討しています。


結果ですが顔の右側と左の額でメラニンインデックスが有意に減少、Visia Skin Anaylsisでも UV Spot の有意な減少を認めたとのことです。タイのデータなので日本人にもそのまま適応できるかどうかと、長期投与の安全性については検討の余地がありそうですが、ポジティブデータということです。

磁気刺激を応援するクラウドファンディング「脳卒中の後遺症に悩まれている方々を磁気刺激療法で救いたい」

磁気刺激療法を応援するクラウドファンディング「 脳卒中の後遺症に悩まれている方々を磁気刺激療法で救いたい 」がREADYFORにて行われています。 https://readyfor.jp/projects/hosp_mie-rehabil 経頭蓋磁気刺激療法は脳卒中治療ガイドライ...