2011/10/25

論文を確実にリジェクトしてもらう方法

Diabet Med. 2005;22:371-3.How to ensure your paper is rejected by the statistical reviewer.
聖ルカ臨床教育研究セミナーでリジェクトされる論文の特徴をまとめた報告を教えてもらいました。いろいろ書いてあるのですが、いくつか抜き出してみます。

・序論:明確な研究仮説は述べない

・方法:研究を再現されぬよう、情報の提供を制限する

・統計:統計学者とは話をしなくても良い スタンダードな統計ソフトは高価なのでエクセルで間に合わせる

・結果:被験者の基本特性は報告しない 表はできるだけ複雑にする 95%信頼区間はいらない 棒グラフは3-Dにする

・考察:先行研究についての言及はさけ、確認試験が必要な可能性については示唆しない

リジェクトされたい人は一度目を通されることお勧めします。

2011/10/21

肥満者は脳が小さい

Hum Brain Mapp. 2010 Mar;31(3):353-64.Brain structure and obesity. 体重と脳の体積に関係性があるのでしょうか?これは94人の高齢者におけるBMIと脳の体積を5年間フォローし比較検討した報告です。
結果ですが、肥満者は正常体重者に比べ前頭葉、前帯状回、海馬、基底核の体積が有意に小さかったとの結果です。
機序についてはまだはっきりしていませんが、肥満と脳萎縮には関連性がありそうだとのことです。

2011/10/19

高齢者でも運動により海馬体積、記憶力がUPする

Exercise training increases size of hippocampus and improves memory.PNAS 31, 2011.
近年、BDNF(脳由来神経栄養因子)の発見に伴い運動が脳に良いという証拠が続々と報告されています。これは平均年齢65歳くらいの高齢者120人を対象にした運動と脳に関するRCTです。週3回、有酸素運動かストレッチをやる、というふうに2群にわけ海馬の体積、記憶力、BDNFを1年間フォローしています。
結果ですが有酸素運動群はストレッチ群に比べ、海馬の体積は大きくなり、記憶力もUP、それらはBDNF変化量と関連性があったとのことです。
高齢者でも運動により脳が大きくなり記憶が良くなるとのこと。シンプルな結果ですが、もはや運動が脳にプラスに働くことは疑う余地もないように思われます。

2011/10/16

脳卒中後の運転適性判定につかえるスクリーニング法

Screening for fitness to drive after stroke: A systematic review and meta-analysis.Neurology. 2011 Feb 22;76(8):747-56.
脳卒中患者さんの車運転適正判定はなかなか難しいです。これは脳卒中後の車運転適性判定につかえるスクリーニング方法についてのシステマティックレビューです。

3264つの論文から27つを絞り込みメタアナリシスしています。

結果ですがRoad Sign Recognition,Compass,Trail Making Test Bの3つが使えそうということです。

日本でもなじみのあるTMT:Bに関しては、90秒をカットオフポイントとすると感度80%、特異度62%とのこと。90秒はかなり厳しいと思いますが、スクリーニングとしては良いのかもしれません。

そういえば最近、自動車運転評価の決定版とも言うべき本が出ました。「医療従事者のための自動車運転評価の手引き」です。日本語の類書がないため非常に貴重です。脳卒中の章にはCognitive Behavioral Driver's Inventor(CBDI)Sensory-motor and cognitive tests(SMCTests)Stroke Driver Screening Assessment (SDSA)の3つが紹介されていました。おもしろいです!

2011/10/15

フリーラジカル除去剤の脳卒中後筋萎縮予防効果

Drugs R D. 2010;10(3):155-63.Effects of edaravone on muscle atrophy and locomotor function in patients with ischemic stroke: a randomized controlled pilot study.
フリーラジカル除去剤(エダラボン)の点滴に脳卒中後筋萎縮予防効果がありましたとのMARVELOUS STUDYの報告です。デザインは多施設RCT、エダラボンの使用期間によってShort-term群(3日)とLong-term群(10-14日)の2群にわけ、3ヵ月後の筋萎縮程度と歩行速度をフォローしています。

ベースラインでの年齢性別、NIHSS、下肢筋力などに有意差はなし。

3ヶ月後の結果です。
麻痺足の筋萎縮    Short-term群:8.3%、       Long-term群:3.6%
非麻痺足の筋萎縮  Short-term群:5.7%、       Long-term群:1.5%
最大歩行速度     Short-term群:53.6cm/秒、 Long-term群:97.9/秒
で有意差あり。エダラボン(ラジカット)を長期に使ったほうが筋萎縮が少なく歩行速度も速かったとのこと。Marvelous Results !

2011/10/10

中枢性塩類喪失症候群(CSWS)に対する鉱質コルチコイドの効果

A Randomized Controlled Trial of Hydrocortisone Against Hyponatremia in Patients With Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage.Stroke. 2007 Aug;38(8):2373-5. Epub 2007 Jun 21.
もっとリハ現場で認知されて欲しい、といつも思っている中枢性塩類喪失症候群(cerebral salt wasting syndrome,CSWS)についての報告です。CSWSは尿中にNaがもれる病態があり食塩摂取が有効と言われていますが、なかなかうまくいかないときは鉱質コルチコイドでNaが漏れるのを防ぐという方法があります。
これはSAH後の中枢性塩類喪失症候群(CSWS)の予防に、ヒドロコルチゾンの点滴(10日間)が有効かどうかを検討したRCTです。

結果ですが、ヒドロコルチコイド群の方が有意にNaを維持できたとの報告です。
回復期リハの現場でも遭遇すること多いと思うのですが、多くはスルーされている(またはSIADHと混同されて治療されている)のではないかと想像します。頭部外傷やくも膜下出血後の低覚醒状態でリハがなかなか進まない場合はこの病態がからんでいる可能性があります。低Naに対応するだけで経口摂取能力や歩行バランスがかなり改善する症例を何度か経験しています。

当科ではまず食塩の摂取を、難しければ鉱質コルチコイド作用の強いフロリネフ(0.05mg~0.15mgくらい)を使うことが多いです。使い始めると尿中Naが激減して驚くと思います。また最終的には鉱質コルチコイドの量は減らしていける症例が多いですが、ずっと飲み続けないといけない症例もいるようです。

2011/10/09

人がお金で幸せになれるのは年収80,000$くらいまで

Proc Natl Acad Sci USA. 2010;107(38):16489-93.High income improves evaluation of life but not emotional well-being.
お金があれば幸せになれるのか?これはアメリカ人45万人を対象に行った年収と幸せとの関係性を明らかにした論文です。

結果の図です。基本的には年収があがれば幸せの度合いもあがっていくのですが、80,000$以上にもなると年収があがっても幸せへのPositive affectはあがらなくなる(天井効果)とのこと。

80,000$というと600万円くらいですね。お金で買える幸せには限界があるようです。

2011/10/08

乳酸菌(ガセリ菌)の抗肥満効果

Eur J Clin Nutr. 2010;64:636-43.Regulation of abdominal adiposity by probiotics (Lactobacillus gasseri SBT2055) in adults with obese tendencies in a randomized controlled trial.
乳酸菌には脂質代謝異常改善効果があると言われています。これはラクトバチルス・ガセリという乳酸菌の抗肥満効果を検討したダブルブラインドRCTです。
対象はBMIが24以上の87人、コントロール群(W0)には普通のヨーグルトを、乳酸菌群(W12)にはガセリ菌SP株を含むヨーグルトを1日200g・3ヶ月摂取させています。
結果はコントロール群では変化みられなかったのに対し、乳酸菌群は内臓脂肪面積が4.6%、皮下脂肪面積が3.3%と有意に減少、また体重も1.1kg減少、ウエストも1.7cm細くなり、アディポネクチンも増えたとのことです。

ガセリ菌が腸蠕動を活発にし食物移動が早まることで、過剰な脂肪・糖分の吸収を防いだのではないかとのこと。この菌は雪印メグミルク ナチュレ恵ヨーグルトなどに入ってるということです。

2011/10/05

脳卒中後、早期復職できる人の条件とは?

Functional and occupational characteristics associated with very early return to work after stroke in Japan.Arch Phys Med Rehabil. 2011 May;92(5):743-8.
日本において、脳卒中後に早期復職できる人はどんな人達でしょうか?これは65歳未満の脳卒中335人(日本人)において退院一ヶ月以内に復職できた人達の特徴(病型、身体機能、認知機能、仕事内容など)について調べた論文です。

多変量解析の結果ですが発症時の障害が軽い人ほど復職しやすく、またホワイトカラーの方が2.06倍、退院時解雇されていなかった人の方が17.36倍早期復職できていたという結果です。

ちなみに上記のような失語や無視、注意や記憶の障害などがあるとかなり復職が厳しくなるということも。

確かに一度解雇されてしまった方が新規で仕事を探すとなるとかなり厳しいものがありますね。日本における脳卒中後就労は元の職場に戻れるかどうかによって大きく左右されるため、将来的に生産性を持てそうな人には安易に離職しないよう判断を待ってもらうことも必要かもしれません。あと「復職への意思」は必須条件かと思います。

2011/10/03

自分に向いている国はどこ?(Your Better Life Index)

経済協力開発機構(OECD)が提唱したYour Better Life Index(良い暮らし指数)によって自分にとって最も住みやすい国がどこかわかるというHPです。

11のパラメーター
Housing 住居
Income 収入
Jobs 仕事
Community コミュニティ
Education 教育
Environment 環境
Governance 行政
Health 健康
Life Satisfaction 人生への満足度
Safety 安全
Work Life Balance ワークライフバランス
のうち、自分の人生において何が重要か重み付けをすることで
自分に向いてる国がわかります。

それにしても日本はSafetyだけどWork Life Balanceがひどい、、、

磁気刺激を応援するクラウドファンディング「脳卒中の後遺症に悩まれている方々を磁気刺激療法で救いたい」

磁気刺激療法を応援するクラウドファンディング「 脳卒中の後遺症に悩まれている方々を磁気刺激療法で救いたい 」がREADYFORにて行われています。 https://readyfor.jp/projects/hosp_mie-rehabil 経頭蓋磁気刺激療法は脳卒中治療ガイドライ...