2011/01/28

Medical Outcomes of Dysphagia (MOD):嚥下障害診療におけるアウトカム

Using different perspectives to generate items for a new scale measuring medical outcomes of dysphagia (MOD).Journal of Clinical Epidemiology 2009.
Rosemary Martino論文第二弾、嚥下障害診療におけるアウトカムスケールMODについての論文です。

これがMODの構成図です。嚥下障害診療のアウトカムとしては肺炎予防、栄養改善、QOLという3つのドメインがあり、患者と家族と医療者という三者の立場を考慮する必要があるということですね。嚥下障害診療はただ食べられるようになれば良いというわけではなく、いろいろなファクターとの兼ね合いで食形態を決定するべきです。食形態UP一つにしても、そのUPは誰のため、何のため?家族や本人にどのような影響をもたらすのかと、いつも自問自答しながら診療することが大切かと思います。

2011/01/27

Toronto Bedside Swallowing Screening Test (TOR-BSST):evidence levelの高い嚥下障害スクリーニング

Dysphagia Research Society のpresident electであるRosemary Martinoの論文で、TOR-BSSTという脳卒中後嚥下障害のスクリーニング検査に関するものです。
評価表自体はCanadian Stroke NetworkのSCORE Evidence-Based Recommendations (SCORE EBR)の33,34ページに載っています。


この論文はRandomized controlled diagnostic study designがとられており非常にエビデンスレベルの高いものにしあがっています。TOR-BSST自体は発声、挺舌、咽頭感覚といった身体所見チェックのあと5ccの水を最高10回飲んでもらうというもの。信頼性に関してはICC=0.92、VFとの比較で感度91.3%と非常にすばらしい結果です。最大のポイントは何度も飲ませるところかと。非常に優れた嚥下障害スクリーニング検査だと思います。是非使ってみてください、お勧めです。

2011/01/21

第5回Neurorehabilitation Conference


第5回Neurorehabilitation Conferenceが東京慈恵会医科大学で
2/26(土)16:45~19:00開催予定とのこと。今回は変性疾患についてのお話が多いようです。いろいろなところでニューロリハのイベントが増えてきていますね、楽しみです。

2011/01/19

ビタミンDの臨床効果(review)

Vitamin D: Bone and Beyond, Rationale and Recommendations for Supplementation. American Journal of Medicine.2009. ビタミンDの臨床効果に関するレビューです。下の表がそのまとめですが、骨折・転倒・疼痛・自己免疫疾患・癌、心血管イベント・死亡率・認知機能に改善効果ありとのこと、何にでも効果がありますね。たしか糖尿病や感染症にも良いというデータもあったような、すごいですね。ただし、副作用(高Ca血症)には注意です。

2011/01/17

認知症を予防する食べ物

Food Combination and Alzheimer Disease Risk.Arch Neurol. 2010;67(6):699-706.
アルツハイマー認知症を予防する食べ物に関する論文です。
salad dressing, nuts, fish, tomatoes, poultry, cruciferous vegetables, fruits, and dark and green leafy vegetablesの摂取量が多く、high-fat dairy products, red meat, organ meat, and butterの摂取量の少ない者はアルツハイマー認知症になりにくかったとの結論です。最近少しづつNeuronutritionに関するエビデンスが出てきています、注目です。

2011/01/16

病態栄養学会に参加して

本日、病態栄養学会に参加してきました。参加者が多すぎて抄録集が前日で無くなってしまったとのこと、ショックです。個人的には栄養とアンチエイジングの教育講演が興味深かったです。嚥下障害の栄養管理に関するシンポジウムにも参加しました。若林先生のリハ栄養に関するプレゼンテーションスライド、さらに磨きがかかっているのを感じました。
お昼は栢下先生の嚥下調整食のお話を聞きました。嚥下食の物性測定条件について嚥下食ピラミッドでは圧縮速度が遅く(1mm/sec)、厚労省の許可基準では圧縮速度が速い(10mm/sec)とのこと。以前は嚥下の速度を考慮して早い方が良いのではと思っていたのですが、最近は遅い方が細かな違いが検出できて良いのかもしれないと感じています。ですが、臨床現場で測るとなると早くて済むのなら早い方ががうれしいかもしれません。また、聖隷のゼリー重視の嚥下食分類を参考にしたということですが、ペーストは大丈夫だけどゼリーは誤嚥するというパターンの患者さんもよくいるので(栢下先生も言われていましたが)その辺は「うーん、、、」という感じです。嚥下食にゼリーを使うのは日本くらいのものですよね。
あと、粘度に関してはラインスプレッドテストという簡易検査がありますが、硬さ、凝集性、付着性に関してもこのような簡易検査があれば便利だなと思いました。(リサーチクエスチョンの種ですね。)

あと、うちの病院でも嚥下障害診療に対するチーム医療体制をもう少し整理した方が良いなと思いました。みんなで力を合わせないと!というのは強く感じました。

2011/01/15

海外と日本の雑誌のImpact Factor ランキング

世界の学術雑誌全体でのImpact Factorランキングです。(Journal Cited Reports 2009参照) NEJM 47. NATURE 34. CELL 31. LANCET 30. SCIENCE 29. JAMA28.


こちらは日本の雑誌に絞ったImpact Factorのランキングです。うーん、あまり知ってる雑誌がありません、すいません。
Impact Factorとは1論文あたりの引用回数の平均値をあらわす物で、雑誌の視聴率にあたるものかと思います。上位の物はレビュー誌が多いようですね。ただ、視聴率の高いTV局が必ずしも質の良い番組を作っているとは限りませんので注意が必要です。

脳卒中後上肢麻痺に対するWiiの効果

Effectiveness of Virtual Reality Using Wii Gaming Technology in Stroke Rehabilitation.Stroke.2010.
脳卒中後上肢麻痺に対するWiiを使ったリハの効果を検討した論文です。Brunnstrom stage3以上くらいの患者さんをWii群とレクレーション療法(RT)群にわけWii群はWiiSport(ボーリング、テニス等)とクッキングママを、RT群はトランプゲームなどを1回60分、2週間行った。
結果ですがWiiは安全に実行可能であり、RT群に比べWMFTで平均7秒の有意な改善が認められたとのことです。実際当院でも脳卒中後の患者さんに試してみたところ、OT訓練に勝るものではないにしろ、訓練意欲をUPさせたり在宅での自主トレとして導入し訓練量を稼ぐには良い方法だと感じました。今度のISPRMでもWiiリハのセッションがあり、世界的にも注目されているようです。

2011/01/14

ホルモン年齢と脳卒中後ADLの予後

Predictive value of circulating IGF-I levels in ischemic stroke outcome.J Clin Endocrinol Metab.2006.91: 3928–3934.ホルモン年齢の指標であるIGFと脳卒中後ADLに関して調べた論文です。

IGF低値群はADL改善値が有意に低かったという結論です。ホルモン年齢などのアンチエイジング指標がリハ患者の予後予測に活用できるという良い例かと思います。

2011/01/12

正しい症例報告の書き方(BMJのテンプレートより)

臨床医が初めて書く論文は症例報告(case report)ではないでしょうか。良いcase reportのかき方についてBMJが推奨しているテンプレートなどが見れるページがあるので紹介します。
BMJ Case Reports Instructions for Authors

そもそも症例報告すべきものとして以下のものがあげられています。
Reminder of important clinical lesson
Findings that shed new light on the possible pathogenesis of a disease or an adverse effect
Learning from errors
Unusual presentation of more common disease/injury
Myth exploded
Rare disease
New disease
Novel diagnostic procedure
Novel treatment (new drug/intervention; established drug/procedure in new situation)
Unusual association of diseases/symptoms
Unexpected outcome (positive or negative) including adverse drug reactions

症例報告の形でしか伝えられないことも多々あると思いますし、臨床家からみた詳細な報告はそれ相応の含蓄とインパクトがあると思います。Case Report侮るなかれということですね。

2011/01/10

前庭リハ(vestibular rehabilitation)のRCT

Short-term effects of vestibular rehabilitation in patients with chronic unilateral vestibular dysfunction: a randomized controlled study. Arch Phys Med Rehabil.2009
前庭障害に伴う平衡感覚障害に対する前庭リハ(vestibular rehabilitation)の効果に関するRCTです。
前庭リハによりDizziness Handicap Inventory [DHI]、Berg Balance Scale [BBS]が有意に改善したという結論です。適切なリハにより前庭代償が得られるとのことで、日本ではあまり報告が無いようですが近年諸外国では前庭リハに注目が集まっているようです。

2011/01/09

研究に対するインセンティブ(外的動機づけ)


先日Groher先生の講演会で、より良い研究活動を促進するためには何らかのPayが必要である、とのお話がありましたが、これはインセンティブのことかと思います。

インセンティブ(incentive)とは外的動機づけのことで

・金銭的報償(金銭の補助、賞与など)
・社会的評価(表彰、昇進など)
・自己実現の場の提供(やりがいのある執筆活動や講演の依頼、より良い仕事のできる環境や時間的余裕の提供)
などがあげられます。現実的に良い研究を続けるにはそれなりにお金と時間が必要だという側面もありますし、研究促進のためにはインセンティブの活用が重要だと感じました。

2011/01/07

Michael E. Groher 教授 講演会


Michael E. Groher教授 特別講演会に参加してきました。国際フォーラムの会場はぎゅうぎゅうづめで人がいっぱい。今回はSTが多かったようでした。国際医療福祉大学の柴本勇先生の御講演のあと、柴本先生の通訳つきでの講演でした。一番身につまされたのはVFは本当にゴールデンスタンダードなのか?というお話。確かにVF所見だけで臨床判断できないと思われる事例は、特に急性期病院ではよく経験します。あとFOISMASAのこともお話にでてきました。日本の人達も国際比較のために、これらの尺度をどんどん使うべきだと思いました。
それにしてもなぜ日本にはこんなにも嚥下障害に興味がある人がいるのでしょうか。日本摂食・嚥下リハ学会の会員数はアメリカの嚥下学会であるDysphagia Research Societyと比較してもかなり多いですよね、不思議です。あ、最近Groher先生の本買って読みました、知識の整理に良かったです。Thank you very much Dr.Groher!

2011/01/05

Rehabilitation Journal のImpact Factor

Journal Cited Reports (2009)でRehabilitation Journal のうちImpact Factorが1以上のものを順番にリストアップしてみました。NEUROREHAB NEURAL RE が5.3と一番高いですね。Dysphagiaは1.5とまあまあ。J REHABIL RES DEVとTOP STROKE REHABILは最近あがってきました。Rehabilitation Journal全体的に上がってきている印象を持ちました。

2011/01/04

国際標準化身体活動質問票IPAQ


活動量の評価に使えるものがないかと探していてIPAQなるものを見つけました。International Physical Activity Questionnaire(IPAQ:通称アイパック)はWHOによって国際標準化された活動量測定のための質問紙です。日本語の質問紙票はこちら、実際の活動量の計算方法はこちらでみることができます。(英語ですいませんが、13pのAPPENDIX 1のところです。)廃用の評価等に使えるのではないかと思います。

2011/01/03

新たな脳機能画像メタアナリシス法

Functional brain imaging of swallowing: an activation likelihood estimation meta-analysis.Hum Brain Mapp. 2009 Aug;30(8):2426-39.  Activation Likelihood Estimation (ALE)という脳機能画像のMeta-Analysis Techniqueを使って7つの水嚥下と5つの唾液嚥下の脳機能画像を統合・メタアナリシスしたというもの。

結果ですが
water swallowingで活動がみられた脳の部位(青)は
right inferior parietal lobule (1)
right postcentral gyrus (2)
right insula (3)

唾液嚥下で活動がみられた脳の部位(赤)は
right cingulate gyrus (6a)
left cingulate gyrus (6b)
right medial frontal gyrus (6c)
left precentral gyrus (7)
right precentral gyrus (8)

とのこと、かなり妥当な結果ではないかと思います。脳機能画像研究はNが少ないことが多いためこのような統合技術はとても役に立つと思います、がよくまあこんなことできるなぁ、と驚きました。

2011/01/02

ブログアクセスランキング


本ブログ内のアクセスランキング(去年一年間で)を作ってみました。

1位 JMPとSPSSの良いとこ悪いとこ
JMPやSPSSなどは高い買い物なので皆さん、買う前に一度は検索するのでしょう。結構しっかりまとまっていると自負しています。

2位 脳疾患における低Na:中枢性塩類喪失症候群Cerebral salt-wasting syndrome(CSWS)
CSWSはリハ医にとっても必須の知識かと思うのですが、インターネット上にも情報がほとんどないためここに流れつくのかと。

3位 脳卒中後運動障害へのリハ効果:Lancet Neurology review
ここでやっとニューロリハらしきものが。やはり脳卒中後後遺症に悩む人は多いのかと。

またほとんどは日本からのアクセスでしたが、300件ちかくはアメリカからのアクセスであったことはおどろきです。

Bloggerにはこのようなアクセスデータの統計を出す機能がついています。便利です!

2011/01/01

あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。
おかげさまで年内に10000アクセス達成しました。
今年もよろしくお願い致します。

磁気刺激を応援するクラウドファンディング「脳卒中の後遺症に悩まれている方々を磁気刺激療法で救いたい」

磁気刺激療法を応援するクラウドファンディング「 脳卒中の後遺症に悩まれている方々を磁気刺激療法で救いたい 」がREADYFORにて行われています。 https://readyfor.jp/projects/hosp_mie-rehabil 経頭蓋磁気刺激療法は脳卒中治療ガイドライ...