2011/06/29

たった一回の筋トレでもアディポネクチンは増える

Adipokine responses to acute resistance exercise in trained and untrained men.Med Sci Sport Exerc 42(3):456-62 (2010)
近年、脂肪から出るアディポネクチン(adp)というホルモンにサーチュイン長寿遺伝子を活性化させる作用あることが判明し長寿ホルモンとよばれています。一方、運動習慣によりadpが上昇することは知られていましたが、どのような運動をどの程度やればadpが上昇するかについてはまだ研究不足といったところでした。本研究は1セットの筋トレによりadpが上昇するかどうかをみた研究です。43人を運動習慣により4群に分類、Leg pressでの筋トレをやってもらった後でadpを測定しています。
結果ですが、全群においてadpの有意な上昇もしくはその傾向がみられたという結論です。アディポネクチンを増やすという意味では、一回の運動でも意味がありそうです。「一回でもあがるんだ」と思うと、やる気がでますね。

2011/06/24

脳卒中急性期に高頻度CI療法は逆効果(VECTORS study)

Very Early Constraint-Induced Movement during Stroke Rehabilitation (VECTORS): A single-center RCT.Neurology. 2009;73:195-201.
脳卒中後上肢麻痺に対するCI療法(Constraint induced movement therapy)の有効性はEXCITE Trialで立証されました。それではCI療法はできるだけ早期からできらだけ多くやるべきでしょうか?このVECTORS studyは脳卒中急性期患者に対するCI療法の有効性を検証した論文です。

脳卒中発症から10日前後の患者52人を■通常リハ群、▲低頻度CI群、△高頻度CI群に分けて90日後の上肢機能の改善率を比較検討しています。


結果ですが、通常リハ群と低頻度CI群では差がなかったのに対し、高頻度CI群では上肢麻痺の改善率が有意に劣っていたとの驚くべき結論です。高頻度CI療法は急性期脳卒中患者に対し適応でないということもそうですが、CIの訓練頻度を増やしたことで逆に改善率が低下したということで脳卒中急性期に過度の訓練量は有害、とも受け取れる内容のこの論文、非常に考えさせられます。脳卒中の急性期から慢性期にかけて脳のTrainabilityが変化するということでしょうか。

2011/06/23

高血圧に対するミネラルウォーターの有効性

Mineral water intake reduces blood pressure among subjects with low urinary magnesium and calcium levels. BMC Public Health. 2004.
飲んでる水の質と心疾患とは関連性があるそうです。そこでミネラルウォーターが体に良いというのは本当か?と思い調べてみました。これはMgやCaの豊富な硬水に高血圧改善効果があるかどうかを検証した論文です。
このA・B・Cが本研究で使用された三種類の水です。Cが一番の硬水で銘柄は書いてある通りです。そして70人の患者さんをin a random,double blindに3群にわけ、それぞれの水を1ヶ月飲み続けてもらい、血圧変化をフォローしました。

もともとミネラルの不足していた患者さんにおいて、Cの高硬度水群で有意な降圧を認めたとの結果です。このCの水はフランス政府が科学的に治療効果があると認定した第1号の水で利尿作用があると言われています。(フランスにはミネラルウォーターを用いて病気治療を行う、テルマリズムセンターと呼ばれる医療施設がたくさんあるそうです。) ペットボトルの安全性については議論があるようですが、いくつかのミネラルウォーターには体に良い作用がありそうです。


2011/06/20

脳卒中リハにおける鍼灸の有効性 メタアナリシス


Acupuncture in Poststroke Rehabilitation A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Trials.Stroke 2010.
アメリカでは脳卒中リハ患者に対し鍼灸を行うことがあるそうです。「Acupuncture for Stroke Rehabilitation」なんて教科書があるくらいです。これは脳卒中患者に対する鍼灸の有効性を明らかにしようとしたメタアナリシスです。

鍼灸が脳卒中患者の身体機能やADLに与える影響を検討した中国語の文献35つと英語の文献21つで解析しています。研究によっては少し質の悪いものやNの少ないものも混じっているよう。

メタアナリシスの結果ですが(OR=4.33, 95% CI: 3.09 to 6.08)で鍼灸受けたほうが4倍くらい改善がありましたよとのこと。

ファンネルプロットです。これは残念ながら出版バイアスがありそうです。

過去に同じようなメタアナリシスが3つあったので結果だけ並べてみるとこんな感じです。OR:2.9~12.5、かなり良い結果ですね。
鍼灸をすることで疼痛や筋緊張がコントロールされ、リハ効果が引き出される可能性や神経の可塑性が促通される可能性があるのではないかとのこと。研究の質の問題もあり真偽のほどはわかりませんが、日本ではほとんど行われていないことであり興味深いです。このあたりのこと2013年の北京で開催されるISPRMではたくさん取り上げられるみたいですね。

2011/06/17

第6回国際リハ学会(ISPRM・プエルトリコ)体験記

第6回国際リハ学会(ISPRM・プエルトリコ 2011/6/12-16)に行ってきました。プエルトリコはスペイン語で「美しい港」という意味だそうで、カリブ海にある広島県と同じくらいの大きさの島です。

学会場のコンベンションセンター(夜)は非常に広くて快適でした。雨も心配されていたのですが、ほとんど降らなかったです。

初日オープニングセレモニーがあり、楽器の演奏などが披露されました。毎日、何かしら夜まで楽しめるイベントが組まれていました。

毎日かなりたくさんの人が参加していました。日本からもオーラル11演題、ポスター78演題とたくさんの演題が出されにぎわっていました。

ランチョンセミナーはまるで豪華なディナーショーのようでした。日本のように狭い会場にお弁当持って、、、というのとは違います。

いたるところにスイーツやドリンクが設置されており、会議の間にリフレッシュできるようになっていました。みんな疲れたら集まってました。

災害とリハのシンポジウムでは東北の地震のことも取り上げられ話し合いが持たれました。再生医学やロボット工学のような最先端のイベントもありました。個人的にはNeurorehabilitationとInjectionの話題が興味深かったです。

今後のISPRMですが 2013/6/16-20中国(ペキン)2014/6/13-17メキシコ(カンクン)2015/6/6-11ドイツ(ベルリン) で開催予定とのことです。また来年2012/5/17-19にはインドネシア(バリ)で3rd Asia-Oceanian Conference of Physical and Rehabilitation Medicine (AOCPRM)というアジアオセアニアでの会議もあり、こちらも楽しみです。日本からも本当にたくさん参加されていました。リハ関連職種の方も、是非一度参加されてみると良いと思います。

2011/06/08

有酸素運動がサルコペニアの筋合成能を改善させる

Aerobic Exercise Overcomes the Age-Related Insulin Resistance of Muscle Protein Metabolism by Improving Endothelial Function and Akt/Mammalian Target of Rapamycin Signaling.Diabetes. 2007 ; 56: 1615–1622.
サルコペニアには老化に伴うアミノ酸抵抗性が関係しています。またインスリンによる筋タンパク同化作用の障害も報告されています。これを改善させることは可能でしょうか?
この論文は高齢者に有酸素運動をさせることにより筋タンパク同化作用におけるインスリン抵抗性が改善することを明らかにした報告です。高齢者を有酸素運動群とコントロール群にわけ、インスリンによる筋タンパク合成能を比較検討しています。

結果ですが有酸素運動群ではコントロール群に比べ、インスリンによる筋タンパク合成速度が有意に増加していました。
サルコペニアにおいて筋量を維持向上させるためには、レジスタンストレーニング・BCAAと共に骨格筋合成障害を改善させる意味で有酸素運動をさせた方がより効果的かもしれません。

2011/06/07

老化に伴いアミノ酸抵抗性が増加する

サルコペニアの病態として老化によるタンパク同化機能の低下があると言われています。そしてそれは加齢によりアミノ酸に対する抵抗性が生じる(タンパク同化感受性が低下する)ことも一因ではないかという話があります。この論文はアミノ酸投与に対する若年者と高齢者との違いを検討した論文です。
通常アミノ酸を摂取すると筋のタンパク同化が亢進するのですが、上の図のように高齢者では若年者にくらべアミノ酸に対する反応が低下していました。サルコペニアでは、アミノ酸による筋タンパク同化機能の低下があるかもしれません。

2011/06/06

身体活動の抗炎症効果 Systematic Review

The Effects of Physical Activity on Serum C-Reactive Protein and Inflammatory Markers A Systematic Review. J Am Coll Cardiol, 2005; 45:1563-1569
身体活動には心血管イベントを減らす効果がありますが、身体活動自体に抗炎症効果があるからではないかといわれています。これは本当に身体活動に抗炎症効果があるのかを検討したSystematic Reviewです。急性反応をみた研究が19つ、横断研究が18つ、前向き研究5つが選ばれています。

まず急性反応についてですが、ほぼ全ての論文において激しい運動直後では炎症反応が上がっていました。

一方、急性反応を含まない横断研究についてです。ほぼ全ての論文において高活動群の方が低活動群に比べ身体内の炎症反応が有意に低かったです。

前向き研究でも同様に、ほぼ全ての論文において高活動群の方が炎症が低かったです。

運動直後では炎症が高まりますが、徐々に運動習慣がついてくることによって活性酸素を除去するSOD(スーパーオキサイドジスムターゼ)が誘導され、身体内での炎症反応が抑えられるということのようです。身体活動にはアンチエイジング効果がありそうです。


2011/06/05

筋力低下があると認知症になりやすい


Association of Muscle Strength With the Risk of Alzheimer Disease and the Rate of Cognitive Decline in Community-Dwelling Older Persons.Arch Neurol. 2009;66(11):1339-1344.

近年、筋力低下と様々な疾患の関連性が言われています。これは筋力と認知症との関連性を明らかにした前向きコホート研究の報告です。900人の高齢者を3.6年フォロー、138人が認知症になっています。

proportional hazards modelによる多変量解析の結果、筋力低下群は有意に認知症の発症率が高かったとの結論です。

global cognitive functionも筋力低下群では有意に低下が見られました。認知症にならないためにも筋力維持が大切かもしれません。

2011/06/04

ビタミンDにインフルエンザ予防効果

これはビタミンDにインフルエンザAの予防効果があるかどうかを検討した、多施設共同二重盲検ランダム化プラセボ比較試験の結果です。小中学生をビタミンD群167人、コントロール群167人にわけ、ビタミンD群はステイタスD3を1日1200IU内服、インフルエンザAの診断は外来迅速診断キットを使用しています。

コントロール群は167人中31人インフルエンザAに罹患したのに対し、ビタミンD群は167人中18人しか罹患せず、有意に罹患率が減少していました。ビタミンDの内服により免疫力が高まり、インフルエンザAの罹患率がおおよそ半分になったという驚きの結果でした。





2011/06/01

肥満者は下肢血管損傷後の予後が悪い

The weight of obesity in patients with lower extremity vascular injuries.Injury. 2010.
下肢切断と栄養状態との関連を調べていて見つけた論文で、肥満が下肢血管損傷に与える影響を明らかにしたものです。145人の下肢血管損傷患者をBMI30以上かどうかで2群にわけて検討しています。

結果ですが肥満でない患者に比べ肥満者のほうが切断などの外科処置が多く必要であり、自宅退院できなかったとの結果ですね。これは肥満者のほうが下肢血管損傷後の合併症が多いからだと考察されています。肥満者は下肢血管損傷後の予後が悪いようです。


磁気刺激を応援するクラウドファンディング「脳卒中の後遺症に悩まれている方々を磁気刺激療法で救いたい」

磁気刺激療法を応援するクラウドファンディング「 脳卒中の後遺症に悩まれている方々を磁気刺激療法で救いたい 」がREADYFORにて行われています。 https://readyfor.jp/projects/hosp_mie-rehabil 経頭蓋磁気刺激療法は脳卒中治療ガイドライ...